RETAIL TECH 2021.08.04

「顧客の声を掘り起こす “画像解析” が店舗やSNSをビッグデータの鉱脈に変える」のウェビナーレポート<後半>

 

前回の記事 株式会社ニューロープ主催のウェブセミナー「顧客の声を掘り起こす “画像解析” が店舗やSNSをビッグデータの鉱脈に変える – Fashion Frontiers by Newrope #8」のウェビナーレポートの続き<後半>を記載しております。

 

計測ツールはどのような業態から求められるのか

 

(酒井)計測って、どのような業態のお客様に求められることが多いんでしょうか?

 

(阪本)やはりアパレルの企業様が多いです。

最近は商業施設の企業様からも多くお問い合わせをいただいておりますね。

人の流れがあるところは、大抵計測の意味があると思ってます。

 

(酒井)今の小売企業様の多くは“コロナ禍”の影響で売上が下がっている状態ですが、それでも計測に魅力を感じて投資される企業様って多いんですね。

 

(阪本)売上が下がっている=コロナ禍だから、という理由で一括りにされがちなのですが、僕たちでモニタリングさせていただいた店舗様の中で、コロナ禍になる前と後で店舗前交通量がそこまで変わっていないところがあるんですよね。

店舗前交通量の減少の他に要因は何か分析していくためにデータ数値を取得していくことは、経営者の方を始めとして結構需要があるんだなと感じています。

 

(酒井)元からリアル店舗の売上は減っている傾向にあったので、コロナ禍関係なく根本にあった問題を解決しようとしているわけですよね。

ただ規模が大きい店舗だと、全てオンラインにシフトするのは難しく、店舗は店舗の役割があるので、そこを良くしていかなければいけませんよね。

 

(阪本)全部オンラインにシフトするとなると、EC・webサイト上の顧客行動でしか判断できなくなってしまうのが問題です。

商品の売れ筋や興味度合いとか、リアル店舗でしか判断できないような情報もあるので。

今までは単純にモノを売るための売り場だったところが“マーケティング”の場として変わってくるのも、今流行りの“DX”につながってくるのではないかと思います。

 

(酒井)EC化はデータが取れているような気にはなるけれど、割と取れていないものも多くありますよね。

店舗だと、それこそ画像をもとに表情や滞在時間など、細かいところまで取れるわけですよね。

 

(阪本)あとは、ツールで計測できるものは全てツールに任せて、人は人らしい仕事に専念するべきかなと思います。

従来モノを売るのに努力をしていた店舗スタッフの方は、情報を収集する“マーケター”としてお客様の声を集める方にシフトする方が、より効率的に店舗運用できそうな気がします。

 

分析データを活用するためにどのような体制が必要か

 

(酒井)あとお聞きしたかったのは、分析データを活用するためにはどのような体制が必要か?というところです。ただ分析ツールを導入しただけでは、うまく店舗が回らないですし、「ツールを使ってこうしていきたい!」とコミットする人がいなければあまり意味がないかと思います。

 

(阪本)おっしゃる通りです。導入初期は「うちの店舗って意外と30代のお客様も多いんだ!」と盛り上がるんですが、それだけでストップして施策につなげられない企業様もいらっしゃるのが事実です。

データ分析を専門的に行う方より、仮説検証を積極的に行う方がいらっしゃるかどうかが重要なポイントです。

例えば、Aの棚とBの棚の滞在時間を比べて、Aの棚の方が良かったからAのアイテムを横展開するか、もしかしたら場所によっては違う結果になるのでは…といった疑問と仮説を持ってPDCAを回せるような方がいないと、データを取得しても意味がないなと思っております。

 

個人情報の考え方

 

(酒井)あと、画像解析で切り離せないトピックスが「個人情報」問題ですよね。

 

(阪本)まだ法律が追いついていない課題だと思います。

総務省から「カメラ画像利活用 ガイドブック」に基づいて運営をお願いします、といった規定は出ています。

このガイドブック上では、「お客様に承認を得ていれば個人情報の取得は問題ないです」といったことが記載されているため、法令的には今のところ問題はないかなと思います。

ただ、サーバーに残っていた録画データがハッキング・クラッキング等を受けて流出してしまうのは「個人情報保護法」という別の問題になるため、こちらは十分に留意しなくてはいけません。

ちなみにクレストで提供している「RetailNext」や「Xovis」は、日本の法律よりはるかに厳しいEUで出されている“GDPR”で提唱されている基準をクリアしているので、日本がそれ以上に厳しい法令を出さない限りは問題ないかなと考えております。

 

(酒井)日本はまだ他国と比べて個人情報の規制が緩いかもしれませんね。

先ほどお話した「お得意様の顔の特徴点を捉える」という事例ですが、こちらは個人情報には当たらないんですか?

 

(阪本)こちらの場合は個人情報に該当してしまいます。

ここで重要になってくるのは、「特定する情報を保存しておきます」という事実をお客様に同意していただくことです。

顔の特徴点を捉えることは個人情報の特定につながりやすいので、お客様に事前にお伝えして同意を得られなければなりません。

例えば、ECサイトで商品を購入する際に記載されている規約をよく読むと、「メールアドレスや個人を特定する情報はマーケティングデータとして使います」というニュアンスの文章が書かれているかと思います。

これと同様に、個人情報の特定はオプトイン(許諾)を事前に行っていることが前提となります。

 

(酒井)あとは法律ではなく、消費者サイドの視点に立つと「個人情報の保護」はどう捉えられますか?

 

(阪本)CGの世界で「不気味の谷」という心理現象が存在します。

CGに対する違和感や嫌悪感のことを指すんですが、それと同様に消費者がカメラに対して気味悪いと思うかどうか、これが1つ大きなポイントかなと思います。

現状のお話をすると、店内に設置されたカメラが原因で消費者からクレームが来たという事例は聞いたことがないです。

そのため、カメラの導入は一般の消費者の方には受け入れられているのではないかなと勝手に思っています。

 

今後、画像解析で解決すべきこと

 

(酒井)結局は取得したデータを施策や接客にどう活かすかが重要ですよね。

今後、この領域はどうしていくべきかなどの展望はありますか?

 

(阪本)この画像解析の分野はもう少し値段が下がらないといけないなと考えてます。

場所や規模にもよりますが、店舗全体で動線分析を行うとなると、かなりのカメラの量が必要となってきて、年間数千万円がかかってしまいます。

そのため、技術の革新といかにコストを下げられるかが課題となってきています。

まだ導入実績はないですが、複数のカメラによる(匿名性を担保した上での)同一人物分析を今開発中です。

この開発が実行できれば、動線分析に必要なカメラの台数が減るため、合わせてコストも抑えられそうです。

あとはデータに新たなマネタイズをしていき、コストを下げるのに加えて様々な場面で活用できるようにできればいいなと考えております。

例えば、サイネージと組み合わせてアパレル企業様が広告を打てるようになったら面白いのではないでしょうか。

洋服のブランドの店頭で化粧品やエステのCMを流してみるなど、それを実行するためのデータを簡単に取得できるよう実現したいです。

 

おわりに

まだこの画像解析の分野はまだ事例が限られている状況です。

まだ実現できることは山ほどあるため、半年後には今より事例が増えているのではないでしょうか。

また改めてお話できる場を設けられればと思います。

 

本ウェビナーを改めて確認したい方は、以下の録画からご覧いただけます。

https://youtu.be/5ZXfMb1VoJo

 

株式会社ニューロープのコーポレートサイトはこちら↓

https://www.newrope.biz/

 

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