LMI Group NEWS 2019.10.11

LUSH(ラッシュ)が語る「テクノロジーとリテールの融合」、アジア最大の新宿店で挑むグローバルブランドの進化

駅の乗降客数が世界1位を誇るJR新宿駅中央東口に、新しいランドマークが誕生しました。大きなLEDビジョンが印象的なそのビルは、2019年6月1日(土)にオープンしたイギリス発のフレッシュハンドメイドコスメ「LUSH(ラッシュ)」のアジア最大の旗艦店です。8月31日(土)にはスパフロアをオープンし、先進的な演出が話題となっています。新宿店のテーマは「ボーダレス」、そして「デジタルとの融合」です。株式会社ラッシュジャパン  コミュニケーションマネージャーの丸田氏は「『All are welcome. Always』─世界中の人々が行き交い、多くの旅行者も訪れる場所だから、できる限り店内の文字情報を減らして”ランゲージフリー”に。代わりに、デジタルスクリーンやアプリを使って、商品情報(価格や原材料、使い方)をお伝えしています。それにより『デジタルツールを駆使した新たなショッピング体験』を提供したいと考えています」と語ります。デジタルで新しい表現を開拓するグローバル企業のブランド戦略とは?イギリス本国でTech Warriors(テックウォーリアーズ、テクノロジーの研究開発チーム)を率いるAdam Goswell様に、LEDビジョンの導入を支援したクレストの田中が伺いました。

(構成・写真 渡邉奈月 <ICPコンサルティング>)

LUSH Digital Global, Tech Warriors Adam Goswell氏(写真 中央右)

ラッシュのグローバルデジタル部門でテクノロジーの研究開発を進めるTech Warrorsをリードし、AI(人工知能)のマシーンラーニング機能やAR(拡張現実)を使ったツールを開発し、化粧品業界の常識や境界線に挑む。最近では自社開発したLush Labs アプリの一機能で、AI機能搭載のLush Lensを使い、プラスチックゴミ削減を目的にパッケージを脱ぎ捨てた商品をスキャンすることで商品の詳細情報が閲覧できる「デジタルパッケージ」を開発。

 

株式会社クレスト Sign & Display Division Field Sales 3 Associate 田中 佑市郎(写真 中央左)

新車カーディーラーにて営業職を10年間経験し、2018年11月クレスト入社。BtoCの分野からBtoBの分野に変わってきた中で、どうすればより良い提案ができるのか日々勉強中。

前職で培ったコミュニケーション能力を活かしながらお客様のベストパートナーを目指します。

 

株式会社ラッシュジャパン コミュニケーションマネージャー 丸田 千果 氏(写真 右)

株式会社クレスト Sign & Display Division Field Sales 3  Manager 奈良 道宣(写真 左)

世界中の最も栄えた街で、思い出に残る体験を届けたい

(提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

田中:今回、クレストは、グローバルブランドのラッシュ様の中でも、アジア最大(総売場面積1240.2㎡)という非常にインパクトのあるプロジェクトに携わらせていただきました。大変光栄です。

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田中:そもそも、世間ではリアルな店舗が減り、ネットショッピングの売り上げ比率が伸びている中で、ラッシュ様がこれだけ大きなリアル店舗を出店された経緯を教えてください。

Adam Goswell氏(以下「アダム」):2019年3月にラッシュ本社があるイギリスで、フラッグシップショップとしてリバプール店をオープンしました。その直後の6月にオープンしたのがアジア最大級の新宿店です。イギリスには「ハイ・ストリート」という言葉があります。都市中心部の大通りを指すのですが、ラッシュがブランドとして大切にしているのが、都市で最も栄えているハイ・ストリートのような場所にお店を出すことです。そこで私たちは、思い出に残る体験をお客様にお届けしたいと考えています。商品やサービスを通じ、触ったり、感じたり、香ったり、五感すべてを通じた体験をFace to Faceでお届けしたいのです。その時の購入につながらなくても、最高の体験を届けたい。それがラッシュの信念です。

田中:なるほど。今回、出店に携わらせていただいて、そのことをすごく実感しています。私自身、香りが好きなので、五感による体験に惹きつけられているということを強く実感しました。モノを売ることを超越して、ラッシュの物語や感動を売っている、と感じたのですが、その根底にあるラッシュというブランドの理念についてぜひお話聞かせていただけないでしょうか。今回、LEDビジョンで流していただいている内容も、他社とは違うラッシュ独自の強いメッセージ性を感じるのです。

世界一、人が集まる新宿だから、大型LEDビジョンでブランドメッセージを発信する

アダム:まず、第一のメッセージとして、ラッシュはお客様に最高のショッピング体験をお届けしたいと思っています。特に今回は、世界中に出店している中で、「東京」という立地にこだわり抜きました。ラッシュというブランドのストーリーのベースは、「フレッシュハンドメイドコスメ」と言っている、とにかくフレッシュで、高品質な化粧品をお届けすることです。それを東京の街に合わせてデザインしています。例えば、今回日本初登場のメイクアップ、作りたてのスキンケア商品、オーガニック100%のフレッシュフラワー、スパの新しい体験など。新宿店の4階、スパトリートメントのフロアは、世界でここだけの新しいデザインにチャレンジしています。

 LUSH 新宿店4階スパフロアを演出するLEDビジョン

(提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

アダム:さらに、第二のメッセージは、倫理観や道徳的価値観という意味を持った「エシックス(Ethics)」に関するものです。建物外観のLEDビジョンでは、そのメッセージを込めています。ラッシュで最初に取り組んだのは、「チャリティポット」と呼ばれるハンド&ボディローションを販売し、消費税を除く売り上げの100%を草の根団体に寄付する活動です。通年で展開しているラッシュの重要な活動の一部ですから、今後、この草の根団体のような、ラッシュと関わっている組織のメッセージも、この大型LEDビジョンを使ってもっと発信していきたいと思っています。またほかにも、ラッシュが訴え続けている化粧品のための動物実験反対のメッセージや、自然環境や社会を再生しようというメッセージ、時には議論を呼ぶような政治的なメッセージなど、東京の「新宿」という実に多くの人が集まるこの街だからこそ、もっともっと、メッセージを発信したいと思っています。

田中:感動しました。私はこのプロジェクトに携わっていたとき、ラッシュがリブランドを図ろうとしているのではないかと思っていました。しかし、あくまで、新宿という街に合わせたブランドの表現なのですね。

アダム:ラッシュでは、1994年にブランドができてから、広告を出稿しないことをポリシーとしています。新聞、ラジオ、Webなどに広告にコストをかけるのではなく、高品質な原材料にコストをかけたいという考えからです。広告は出稿せずとも、人が多く集まるこの新宿に大型店舗を構えることで、ビルボード(屋外看板広告)をオウンドメディアとして持てる。建物の壁にLEDビジョンはぜひ付けたいと考えました。

田中:LEDビジョンは、多くのお客様がセールなどの情報発信にご活用いただいていますが、一方、ラッシュは新宿の一等地で大きくスペースを割いて、情報ではなく、ブランドの思いをひたむきに伝えている。だからこそ、人にこれだけの感動とインパクトを与えられるのだな、とお話を聞いて感じました。

テクノロジー施策の実験の場は日本。新しいブランドの表現を日本発で世界に。

田中:新宿は旗艦店ということもあり、多くの話題を提供していますが、今後の出店計画や、伝えたいメッセージ、もしくは今できていないことがあったらお聞かせいただけませんか。

ラッシュ(LUSH)新宿店では、お客様の動きに応じてムードを演出する実験も。

(提供:株式会社ラッシュジャパン )

 

アダム:ラッシュでは日本というマーケットを、さまざまな実験の場と捉えています。その一つが、2018年11月に原宿にオープンした、バスボム(入浴料)だけを売るコンセプトショップです。新宿店も同様に大きなコンセプトショップと捉えています。先ほど田中さんがおっしゃったようなブランドの見せ方についても、日本の新しい店舗の役割の一つです。特に、グローバルな店舗展開の中で、テクノロジー系の新しいサービスや施策の実験を行うのは日本だと捉えています。デジタルに関する施策は日本での実験の結果をもって、世界展開を図っていきます。例えば、ラッシュでは「Lush Labs Apps(ラッシュラボアプリ)」を展開しています。そこに入っている「Lush Lens」はラッシュの商品をスキャンして楽しむツールなのですが、解析ツールを見ると、グローバルの中で、日本でのLush Lensの使用頻度、スキャン回数が、圧倒的に多いのです。

スパトリートメントは世界で初の見せ方。今後日本で実験したテクノロジーを世界に発信する。

 

田中:そうですか!それは驚きました。

 

アダム:その背景に思いを巡らせると、日本のショップや、スタッフ自身が、テクノロジーの実験の場と理解して積極的に取り組んでいることもあるでしょうし、何より日本という国自体が、テクノロジーや、技術の発展というものを、オープンに、遠慮なく、心地よく受け入れる国民性なのでしょう。これまで、ラッシュはイギリスの会社なので、何か始めるときはイギリス本国で実験をしていたのですが、テクノロジー面は今後、原宿や新宿を最初の実験の場に位置付け、積極的に展開を図りたいと考えています。

 

田中:日本に住んでいるとデジタルコンテンツを受け入れやすい国民性とは自覚できないのですが、確かに電車でスマートフォンを見ている人は多いですし世界から見ればそのような国民性かもしれませんね。

 

アダム:私が小さな頃、父親から音楽を聴くカセットプレイヤーを贈られたのですが、これは日本製のものでした。日本は、テクノロジーの発展においてフロントランナーだと、小さな頃から認識していました。

田中:日本人として嬉しいお言葉をありがとうございます。私たちクレストは、これまで、店舗の軒先につける看板やポスター、紙媒体といったアナログなものをずっと商材として扱ってきました。近年は、テクノロジーの進化に伴い、ラッシュ様のような小売店の方が求めるものを、どう実現するのかを追い求めて、LEDビジョンや、リアル店舗解析ツールのesasyなどデジタルの領域にも進出するようになりました。ラッシュ様は、私たちのような店舗づくりをお手伝いするパートナーにどういったことを求めていらっしゃいますか。

パートナーとともに、エシカルなブランドをつくる

アダム:実はこの建物外観の大型LEDビジョンの導入は、社内でも議論を重ねた、非常に難しい決断だったのです。理由は、エネルギーの使用の観点です。ラッシュは、エシカル消費や社会的責任の観点から、倫理的にエネルギーを消費することを意識しているのです。

田中:確かに、プロジェクトを進める上で、電気使用量が話題に上ることが多かったですね。

アダム:あとは、プラスチックの利用でしょうか。ラッシュでは、商品を販売する際に、不必要な包装をしないようにしています。同様に、店舗の壁面をビルボード化するにあたっても、プラスチックを利用していない製品を選ぼう、そんな議論がありました。今後、このように倫理的な観点で組織が「つくる責任、つかう責任」を果たすために、サプライヤーやパートナーの皆様にも相談やお願いすることが増えていくと思います。例えば、私たちのチームTech Warriors では、既製品のタブレットを使うのではなく、タブレット自体の開発にも取り組んでいます。理由は、ラッシュの商品と同じように、どこで誰がどのように作ったのか、責任を持ちたいからです。中国の工場まで何度も足を運び、労働環境や、レアメタルの調達先など、透明性を持って追いかけられるように確認の体制を整えています。簡単にできることではないのですが、ラッシュだからこそ、社会的な責任や倫理観は、もっと追求していきたいです。

ビジネスによい影響を与えるクラフトマンシップ。ものづくり日本の小売業に期待すること

田中:日本の昔ながらの、ものづくりと通じる考え方かもしれませんね。最後にラッシュ様と同じような小売店の皆様に、メッセージがあればいただけないでしょうか。

 

アダム:今、ものづくりについてお話が出ましたが、ものづくりの文化を育んだ日本のみなさんだからこそ、商品とお客様のことを思い、考え、アクションを起こすことに、最大限注力すべきだと感じています。例えば、お店で扱っている商品が、どこで誰によってどのように作られているか気にかけること、従業員やパートナー、取引先にも公正な給与・報酬が支払われているか気にかけること、このような配慮が、よいビジネスにつながると思うのです。そのことに、努力を惜しまず、情熱を持って、最高のものを作る。それを諦めないことが、クラフトマンシップにおいて、大事なことと考えています。

 

田中:ラッシュのスタッフの方と一緒に仕事をさせていただいて、実に生き生きと仕事をされていると常々感じていました。挨拶一つとってみても、本当に感動したのです。私も心を入れかねなければと背筋が伸びる思いがしました。

 

アダム:ありがとうございます。スタッフが生き生きと働いていることは、ラッシュの誇りでもあります。そして、クレストさんからLEDビジョンを買うことも、ぜひ読者のみなさまにおすすめしたいと思います。

田中:私も頑張ってご提案します!本日は貴重なお話をありがとうございました。

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