RETAIL TECH 2021.09.02
「店舗計測」が小売店にもたらす一番のメリットは何か?のウェビナーレポート<前半>
「店舗計測をして、本当に結果が良くなるのか?」と疑問に思う方が多いのではないでしょうか。
確かに店舗がデータの恩恵を受けるためには、ただ店舗計測ツールを導入すればいいというわけではなく、ツールの本質的なメリットについて理解しておく必要があります。
今回は、エッジデバイス上で画像解析AIなどを実⾏して現場データを取得し、Webと連携するIoTシステムを構築・運⽤する為のプラットフォームサービス「Actcast」と最先端のAI防犯カメラ「ミルシル」を開発しているIdein株式会社 CEO 中村 晃一様と、弊社で店舗分析ツールの導入やデータ分析のサポートを行っている取締役の阪本で、過去の事例をもとに店舗計測のメリットについて色々とお話させていただきました。
約1時間に及ぶウェビナー内容をレポートにしてまとめましたので、店舗で行う計測やソリューションについてご興味がある方はぜひ参考にしていただければと思います。
登壇者プロフィール
中村 晃一/Idein株式会社 代表取締役 CEO
東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程を退学後、最新技術を誰もが手軽に利用できるようにする為のプラットフォームを創りたいという想いでIdein株式会社を設立。
大学では主に高性能計算の為の最適化コンパイラ技術を研究。
2018年に英ARM社の選定するARM Innovatorに日本人として初めて選定。
阪本 治彦/株式会社クレスト 取締役 マーケティング部長 兼 リテールテックチーム責任者
Webデザイン、ディレクション、プランニング、新規事業開発、コンサルティングなどを経て、2018年より株式会社クレストにジョイン。
2019年同社取締役に就任。小売店舗の計測等、小売のDXを支援する「リテールテック」事業の責任者、及びマーケティング責任者。
テキサス州オースティンで毎年開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」の元エヴァンジェリスト。
店舗計測に「正確さ」は必要か?
(阪本)トラフィックカウンターの導入を検討された方のほとんどが、ツールの精度を気にされたかと思います。
果たして、店舗計測において正確性は重要視するべきところなのでしょうか。
(中村)まず大前提として昨今AI技術はすごく進化していますが、99.999%というような世の中で期待されている精度には到底及びません。
最先端のテクノロジーでさえ80%程度であれば良い方と言われています。
店舗の場合も照明やツールを設置する高さなど、それぞれ環境というものが違ってくるため、それに合わせて精度も差が出てきます。
その上でツールをどう活用していくかがポイントです。
(阪本)活用場面によって、本当に精度が重要なのかどうかって変わってきますよね。
例えば入店者数を計測する際、検知した人数がリアルと多少違っただけで店舗運営や企業の売上に支障をきたすようであれば、それは導入してはいけないと思っています。
一方で、経営指標を決めたり顧客の傾向を確認したいということであれば、80%程の精度であれば活用いただけるのではないでしょうか。
なので、まずは精度を気にする前に“活用目的は何か”を明確にする必要があります。
あとは店舗の規模によるかと思います。
1日の利用者数が10人の店舗と100人の店舗を比べたときに、計測の誤差による影響が大きいのは前者だと考えられます。
そのため、計測カメラ前にどれぐらいの人が通りそうか予め把握しておく必要があります。
(中村)最大限精度を高める必要があるのは変わらないです。
ただ、絶対値ではなく“変化を知る”ことが重要ということは忘れてはいけません。
前の週、前の月に比べてどうだったか、もしくはA店とB店でどう違ったか、比較するための材料という認識であることが正しいです。
誤差の出方がデタラメであるのはさすがに問題ですが、時間軸の方向では一定の品質を保っていることが重要ですね。
あとは、人を見逃してしまう、もしくはダブルカウントしてしまうなど色々な間違いがあります。
それを統計量として見たときに、長い期間計測し続ければするほどデータも貯まってくるので平均値の精度は上がるかもしれませんね。
AIそのものの精度と、得られるKPIの精度は少し違うものだと思います。
もし導入を考えているのであれば、高い精度にこだわりすぎず、今存在するテクノロジーをどう活用していくかを考えなければなりません。
(阪本)あとは正確性と長期間の計測、どちらに比重をおくかですね。
正確性を重要視するのであれば手動でカウントする方がいいとは思いますが、有限なので長期間続けるのはとても難しい。
ただ、ツールを使えば24時間まんべんなく計測し続けてくれるので、ニーズとしてはこちらの方が合っている気がします。
(中村)売上アップのために様々な施策をやる上で、「データでは施策を実行した期間このぐらいの変化があった」という継続的な変化を見ることが重要だと思います。
スポットだけで見ると、そのような変化を見つけることは難しいですね。
あとは、「人間だから精度がいい」というのは大きな誤解があると一言お伝えしたいです。人間が手動でカウントしていても、全員正しく計測できているとは一概には言えないですし。
そう考えれば、一定の品質でずっと計測するほうが、データ分析をする視点で考えたときに価値があるんじゃないかと思います。
なぜ「店舗計測」は失敗するのか?
(阪本)次のテーマは店舗計測の失敗についてですが、先ほど出てきた「計測の目的」というキーワードに繋がってくるかと思います。
クレストの経験上、計測の目的が曖昧になったままツールを導入していって、データを確かめて終わってしまう、というケースが実際にありました。
(中村)弊社の場合も、「具体的にデータを何に使うのか」が明確になっていれば失敗することはあまり無かったです。
「会社の経営陣に意思決定をしてもらうためのレポートを作りたい」とか、「広告の効果を測定して、営業資料に活用する」とか、そのレベルまではっきりしていて失敗したことはまずありませんね。
目的がはっきりしていると、ツールを提供する側も「じゃあこういう計測をしていきましょう」と自信を持って提案できます。
(阪本)「まずはデータ分析をしてみたい」という目的=失敗は大げさかもしれないですが、計測をするのであればしっかりご活用いただきたいという気持ちがあります。
私たちはカメラではなく“計測で得られるデータ”を売っているという思いがあるので、そこに価値を感じていただけるととてもやりがいがあります。
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