LMI Group NEWS 2020.01.27

【インナチュラル×クレスト役員対談】 B2BとB2Cが共存するグループ経営の価値とは?

レガシー産業でイノベーションを起こし続けている株式会社クレストから、2019年9月に新設法人として切り出された株式会社インナチュラルの営業部長の片山氏、そして株式会社クレストの取締役サイン&ディスプレイ事業部長の阿部氏に、B2BとB2Cが共存するクレストホールディングスのグループ経営の価値について深ぼって見ました。

 

永井:今日は株式会社クレストから阿部さん、株式会社インナチュラルから片山さんをお呼びして、それぞれの事業における共通事項と違うポイントについてお話を深めて行ければと思います。
まず最初に、それぞれがどんなことをやっているのかをお話頂けますか?

片山:はい、私はインナチュラルの中で、営業部という組織を見ている立場でして、現在のインナチュラルの中には、営業部、販売部、企画MD部という大きく3つの組織があります。PLで言えば、売上から営業利益までをまんべんなくみていくのが営業部、販売部は売上と人件費などを見ていく部門、そして企画MD部は在庫、粗利、そしてBSの商材部分をみていく組織になります。

阿部:私は株式会社クレストの中でのサイン&ディスプレイ事業の統括をしています。小売事業会社に対して、看板や、販促物、ショーウインドウディスプレイなどの施工を行う組織を担っています。つまり、私の部署では片山さんの営業部の中の、リアル店舗での広告活動を行う場合にオーダーが来る先がクレストになる、ということだと思います。

 

頼られる営業と販売員は同じスキルセットを持つ

 

永井:なるほどですね。ではこの共通するポイントから深掘りして行ければと思いますが、ずばり具体的に、片山さんがクレストのようなサイン&ディスプレイ系の会社にVMDの制作物を依頼する場合、どういう会社に頼みたいと思いますか?

片山:そこは、「言いなりになるのではなく提案を聞いてくれる会社」が良いと思っています。私達が何かをお願いしたいと言って、それを言われたとおりそのまま実現してくれるのは大変素晴らしいことでもありますが、「こういう表現もありますよ?」という追加のアイデアをどんどんくれることが重要になります。

阿部:それは確かにそうなのですが、私達のように様々な規模感や業種の企業をお客様に持っているとすると、全てがそういうわけにもいかないのも事実です。例えば、グローバルブランドであれば「本国から指示されたものをできるかぎり再現する」ことが重要であり、そこに対して「こうやったほうがよくないですか?」ということを言ってはいけないケースも多数ありますし、また私達が直接取引をするお客様個人の嗜好と思考をしっかりと尊重しながら進めることも大切です。一方で、仲良くなってきたり、私達がそのお客様のブランドの理解度が深まってきたりする段階においては「こういうアイデアもあります」という新たなご提案ができるのだと思っています。

永井:そういう意味では、B2CもB2Bも同じなんだと思います。B2Bで言えば、初めて来店したお客様が良いと思って自分で選んだワンピースがあって、販売員が「それよりこっちのワンピのほうがよくないですか?」というのはナンセンスでしょうが、そのお客様が後に何度もリピートしてくれるお客様に成長したときには、その販売員は「お客様ならこっちのほうがきっと似合うと思います」と伝えられるフェーズになる。つまりB2BでもB2Cでも「顧客の理解」と「タイミング」が非常に重要になってくるものだと思います。

阿部:まさにそうですね。ちなみに私自身のケースで申し上げると、例えば新規のお客様との1回目のビジネスではできるだけお客様の指示を忠実に実行するようにします。ですが、それを踏まえて2回目、3回目の受注からは「もっとこうしたほうがよいと思う」という自分のアイデアを出しに行きますね。

片山:確かにそのとおりで、B2Cで言えば初めて買い物に来たお客様に「絶対お客様ならこっちのほうが似合いますよ」なんて言えないですが、一方で何度も買いに来てくれているリピーターさんならば思い切って「絶対こっちのほうが似合いますよ!」という提案が出来ますね。そういった観点でも、B2BもB2Cも全く同じことなんだと思います。

永井:ではお二人が完全に新人の頃っていかがでしたか?

阿部:新人の頃は残念なことに2回目も3回目も同じ提案をしてしまっていました。片山さんも同じですかね。

片山:はい、特に販売員で致命的なのが、お客様の顔を覚えていないけれどもお客様は販売員の顔を覚えているパターン。この時に前回と同じような会話からはじめてしまって不審がられたら最悪です。それが2回も3回も続いていたら目も当てられないですね。

阿部:なので私達クレストでは営業組織は最大7名で構成されるチーム制を敷いて、プロフェッショナルなマネジメント職が新人のそういった部分をカバーできるように仕組み化されています。教育プロセスはOJTですが、チームでしっかりとカバーできる体制ですので安心ですね。

VMDの効果検証

永井:ところで、クレストはVMDやマーケティングなどの部署からリアル店舗向け企業様に対して効果検証をするということは最近の小売事業会社内での浸透度含めてどういう市況でしょうか?

 

片山:弊社もクレスト社のリテールテック事業部のesasy(エサシー)を設置しています。市況から申し上げると、まだまだキャズムを超えていないという状況ではないでしょうか。これは長期的には必ず小売のスタンダードにはなるとは思いますが、もう少し時間がかかる印象ではあります。カメラやWi-Fi、ビーコン等での、VMDの効果測定のベンチャー等が普及しはじめている中、小売業界側がこのデータ分析を受け入れる体制をとらなければなりません。

私は前職は大手外資系小売ブランドに勤めていました。VMDの効果検証は全く行っておらず、どちらかというと「ビジネスモデルに組み込まれている」という言い方のほうが正しくて、必ず定められた周期で必ずなにかの商品をピックアップしてプロモーションをし続ける、ということがデフォルトになっています。なので、効果がどうこうという分析は、入店量・購入量・単価・プロモーション対象商材の売上比率等から計算されて導かれるものではありますが、これはダイレクトにリアル店舗に設置されたポスターの効果に直結するものではないので、因果関係を見出すことは難しいという結論になっています。

阿部:私達クレストのリテールテック事業部がエサシーというリアル店舗の計測ツールを販売していますが、この因果関係を見出すことを目指しています。少しでも多くのパラメーターを見出して、要因を因数分解できるような数式の提供をすることが、結果として私達が日々VMDの方々と切磋琢磨しているものの効果が測定できることに繋がります。

永井:面白いですね。小売を経営する片山さんと、そして阿部さんが見る小売のVMDへの問題意識も共通点がありますね。

永井:一方で、このB2BとB2Cのビジネスで大きく差異があるものはなんだろうなと考えておりましたが、例えばPLの項目でいうと粗利率という観点で議論してみるのは面白いと思います。例えば、去年の9月からクレストホールディングスのグループ入りを果たした、株式会社東集は、グループ入り後から3ヶ月で粗利率の5%以上の改善に成功したという事例を作ることができました。これはB2Bならではの事例だと思っています。小売では逆に、今月の粗利を今月中に改善するということは相当売上高にも影響が出てしまうので、そう短期的な取り組みで成功するものではないと捉えています。これらについてはいかがでしょうか。

 

在庫ビジネスと受注生産ビジネスでは粗利のコントロール方法が違う

 

片山:B2Cの立場からすると、粗利を3ヶ月で改善できるのは値上げしか考えられないので非常に難しいことを成し遂げたなと思っていますが、どうやったらそんなに素早い改善が出来るものなのでしょうか?

阿部:粗利率については売値と仕入れ値のコントロールという2軸しかないのは両ビジネスにとって同じことだと思いますが、B2Bの中でもとりわけ在庫を持たない、そして定められた商品リストが無い、私達のような広告物の受注生産モデルで言えば、価格競争に巻き込まれない限りは、案件単位でコントロールしやすい科目になります。

片山:なるほど!東集もクレストも売上のうち在庫品比率が少ないから、よりコントロールがしやすいわけですね。インナチュラルは店舗で売れるものは全て事前に仕入れて仕入れ値と売値が決まっているものです。また売値も販売スタッフの判断では当然上下させることはできないので、リアルタイムに案件単位で粗利をコントロールということは不可能に近い。だから、在庫品の仕入や生産が決定したタイミングで既にその商品が入荷して販売する月の粗利率が決まっている。つまり発注から販売までが3ヶ月かかれば、粗利を本部としてコントロールできるのは3ヶ月以上先になってしまう。ビジネスモデルの特性上、これはしょうがないことですが、そういう観点ではB2Bはある意味羨ましいですね!

阿部:そう捉えられるかもしれないですね。一方で我々B2Bは基本的にはセールという概念が無いのです。あったとしてもキャンペーン的なディスカウントのみで、それもディスカウントしただそっくりそのまま粗利率に跳ね返ってきます。一方で小売の場合はセール用の商材などを別注で発注していたりするとお聞きしたので、むしろ大きくディスカウントを行ってトップラインである売上高を上げに行きながらも粗利を維持する、という戦略がなかなか打ちにくいことが裏を返すとB2Bにはあるということがわかります。

片山:こうやって話してみると、お互いのビジネスから類推して、良い点を真似ていくことができるなと感じています。

永井:おっしゃるとおりで、例えば戦略的にセール向けの商材をB2Bのビジネスでも取り入れたり、B2Cのビジネスでもその場で粗利をコントロールできるような受注生産品を投入してみたりするようなこともできるかもしれないですね。

 

他社から学び続ける精神が重要

 

阿部:重要なのは、とにかく自分たちの既存のビジネスモデルに満足せずに、周囲から学び、新たなビジネスを考え続けることです。どこにビジネスの新しいアイデアの種が隠されているのかわかりませんね。

永井:まさにそうですね。私達クレストホールディングスというグループでは、この事業会社間のシナジーのことを「グループブレンド」と言っており、このブレンドをより増していこうということがまさに今年のホールディングスの全社戦略の1つでもあります。
今回のこの対談もまさにその一環ですし、そしてこの対談の中で出てきたそれぞれのビジネスモデルを互いに理解して、そして自分たちのビジネスにそれを返していくという流れこそがまさに私達が目指すべきブレンドのプロセスになります。

阿部:お客様にとって、クレストと付き合って頂けること自体が1つの付加価値になれるように、より私達が自ら学び続けなければなりませんね。
片山:引き続きグループ一丸となってよきブレンドを続けてまいりましょう。

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