RETAIL TECH 2019.07.28
Web評価とVMD評価の共通点とその効能
リテールテック事業部の阪本です。
私のキャリアの多くはWebディレクターです。WebディレクターとしてWebサイトの効果を測り、より効果的なサイトへと作り変えていく業務を多くこなしてきました。
○ ファーストビューと呼ばれる、サイトが読み込まれてすぐ表示される一画面の中に、どのようなビジュアルを表示するのか?
○ 外部リンクを貼る場合、バナーの方がいいのか? それともテキストによるリンクがいいのか?
○ 検索連動型広告のコピーは、どのようなものが効果があるのか?
○ バナーに利用するモデルは、男性がいいのか? それとも女性がいいのか?
以上のような判断を、ディレクターやデザイナーのセンスや思い込みでするのではなく、Google Analytics等のツールを利用して、PV(ページビュー:何回ページが表示されたか)やUU(ユニークユーザー:何人サイトを訪れたのか)、サイト滞在時間やreferrer(リファラー:サイトに来る前に表示されていたサイトやページ)などの、定量的な情報を基に判断していく事が重要であり、今となっては常識となりました。
今回はそんなWebサイト作成の常識を、VMDの世界に持ってくるとどうなるか? についてのお話です。
Contents
WebサイトにおけるABテスト
ABテストという言葉を聞いたことがありますか? AパターンとBパターンのデザインを同時に公開し、より効果的な解析結果が出た方を正式に採用するというテストで、Webの世界では当たり前のように行われています。
ABテストとは 今さら聞けないABテストの基礎中の基礎まとめ | 株式会社アッション
https://www.assion.co.jp/blog/guide-of-abtesting/
このABテストはバナーやLP(ランディングページ)の評価によく使われる手法で、ABテストを簡単に行うツールもあるなど、Webサイトを利用したビジネスを行う企業では必須のマーケティング手法と言えます。
ビジネスにおけるデザインの役割は、小奇麗に作られる事や、目立つように作られる事ではなく、集客や購買行動等の効果をしっかりと出すことです。Webの世界ではクリックされた数や滞在時間などを、Google Analytics等のツールを使って計測し、その結果を分析して、より効果のあるデザインに仕立て上げていく事が出来ます。
また、Webデザインは、チラシやポスターなどのように、一度印刷してしまうと後戻りが出来ないという特性がない為、計測結果を基に、いろいろと変更をしていくことが可能です。
Webクリエイティブの評価につかう代表的な指標
ABテストを行う際にも重要になってくる指標が、Webの世界にはいくつかあります。その中でも私が特に重要だと思う指標は以下の通りです。
PV(ページビュー)、imp(impression:インプレッション)
PVはページがブラウザに何回表示されたかを表し、impはバナーや広告等がどれくらい表示されたかを表す数値です。
UU(ユニークユーザー)
PV値は、同じブラウザで10回表示されると10回カウントされてしまいますが、UU値は同一のブラウザ(つまりユーザー)が何度そのページを表示させても「1」です。つまり、そのページを訪れた人数となります。
CL(クリック)、CTR(クリック率)
バナーや広告がクリックされた回数がCLです。また、imp数のうちのCLされた確率をCTRと呼びます。もちろん、CTRの高いもののほうが効果が高いと言えます。
CV(コンバージョン)、CVR(コンバージョン率)
例えばショッピングサイトであれば購入された数、問い合わせ受付サイトであれば問い合わせの数、のように、そのページの最終目的まで達成した(された)数のことをCVといいます。また、CLやPV等を母数として割り算をしたCVRという数値もよく利用します。
他にも様々な指標はありますが、Webページやバナー、Web広告の効果はこの数値群を見れば大体わかります。
VMDが担う数値はCTRに該当する
さて、店舗全体をWebサイトと捉えた場合、VMDが担うべき指標は何でしょうか? それはCTRに近いのではと考えます。Webにおけるクリック、及びクリック率は、購買に至る為のいわば入り口部分の重要な指標です。バナーを見ただけの人が購買行動を起こす事は物理的に不可能であり(サイトへ遷移しないから)、クリックされて初めて、その先の「商品閲覧」「ショッピングカート」「購買」へとつながっていくわけです。
これは現実世界における店頭のVPやVMDの役割に近いと言えます。VP・VMDを見たお客様が実際に来店したかどうかを計測する事が出来れば、間接的にそのVP・VMDが店舗の売上にどれくらい寄与していたかどうかがわかります。ただ、VPやVMDが「見られたかどうか」だけでは、最終的な購買にどの程度作用しているかどうかを測ることは難しく、入店率にどれくらい寄与していたのか、また、技術的には難易度があがりますが、VP・VMDを見ていたお客様の行動を店内でトラッキング(追跡)し、実際に商品を手に取り、購買に至っているかまでが計測出来るとベストです。
まずはVMDの効果を測り始めましょう
兎にも角にも、まずは数値を取る事が必要です。数値を取る方法はいくつかあります。
ハンドカウントする
一番カンタンで、かつ、低価格で始められる方法です。ハンドカウンター(日本野鳥の会が持っているアレです)でカチカチと、VMDを見たと思われるお客様の人数をカウントします。指標として、店舗前を通行している人数と、入店する人数もカウントしたほうが良いですが、そうなると複数人での計測が必要となる為、まずはVMDが見られている数をカウントしてみます。
アンケートを取ってみる
お客様とのコミュニケーションが必要となる為、若干ハードルが上がります。ご購入頂いたお客様や、お声がけしたお客様に対して、「店頭にこんなエリアを作っていたんですが、お気づきになられました?」と聞いてみます。Yes/Noの数を数え、どれくらいVMDが見られていたかをカウントします。購買した方・していない方別に数値を取ることで、購買に直接紐付いていたかどうかもわかります。
esasyを導入する
最後は営業となりますが、我々のリテールアナリティクスツールである「esasy」のご導入をご検討ください。カメラをマネキンやVMDの中に取り付ける事で、どれくらい見られていたかの視認数が取得出来ます。別のカメラでVMD前の交通量を計測する事で、VMDの視認率・足止め率を算出する事も可能です。最近の話となりますが、以下の写真のような、カメラを内蔵したマネキンも開発しました。
数値の正確性と「変動率」
もちろん、数値の精度(正確にカウント出来ているか)について、高い方が良いのは間違いがありません。ですが、VMDの効果を測定する為に、実は数値の精度はあまり関係がありません。重要になってくるのは実際の数値ではなく、時系列で並べた際の変動率です。
例えば、前週50回見られていたVP・VMDが、今週に入って100回見られていた場合、その変動率は純粋に200%であり、「このVPは前週に比べて200%の効果を発揮している」と言えます。これが前週100、今週200であったり、前週10、今週20であっても、同等の効果であると報告されます。
ところがこれを、「前週とくらべて視認数が50あがった」や「100あがった」「10あがった」と報告すると、同等の効果が得られているにも関わらず、実際の数値のインパクトが邪魔をして、冷静な判断を妨げる事があります。数値は実際の店舗前の交通量や天気等、外部要因に左右される事が多く、VP・VMD単体の評価をはかる指標にするには注意が必要です。
ただし、変動率を指標とする為には、全時間を通して同じ認識率で計測がされている事が前提条件となります。月曜日と火曜日でカウントするアルバイトが違い、それぞれの判断のズレによるカウント違いが発生すると、その変動率まで狂ってくる事になります。每日同じように計測をし、同じようにミスをする(?)必要があります。
これからのVMDの効果測定
現在、我々のesasyでは、VPやVMDがどれくらい見られたかの「視認数」を取得する事が可能です。これは、カメラに映っている顔の向きを判別し、正面を向いている顔の数のみを数えるというロジックがはたらいています。
esasyの特徴の一つに「個人情報を取らない」というものがあります。カメラに映った顔の向きをカウントした後は、すぐに画像を消去しており、個人を特定出来る情報はクラウド側に保存していません。逆にこれがネックとなり、esasyでは、カメラ間で移動した人物の行動をトラッキング(追跡)出来ない、という欠点があります。個人を識別する情報がクラウド上にあれば、現在レジ前でお会計をしているお客様が、店頭のVMDを見たか / 見ていないかの判別が出来、結果的にVMDが購買に及ぼしたより具体的な数を計測する事が可能になります。
現在クレスト リテールテック事業部では、より高度なリテールアナリティクスを提供すべく、新しいカメラの開発も行っている所です。もちろん、個人情報保護の観点や、プライバシー保護の観点は崩さず、店舗様、ご来店されるお客さまに、さらに大きな価値をご提供するソリューションとなるよう、努力しております。