CEO 2018.11.11

社長Blog Vol.12: 教育とイノベーション

 最近社内でも若手メンバー、学生インターンなども増えており、若い人たちと触れる機会が以前よりも増えてきた。またエンジェル投資家としても活動しているという私の情報をキャッチしてか、若手の起業家(またはそれを目指す方々)なども私の話を聞きに来る機会が増えてきたりしている。更に、お陰様でメディアで私や弊社を取り上げて頂く機会も増え、それもあってか高い頻度で講演などもさせて頂くチャンスを頂き、30歳そこそこの私がそれこそ大企業の経営者大先輩方の前で「企業のサステナビリティ」について語るという、非常に恐れ多くも有り難い環境に心から感謝している。
 また最近の社内ではクレストの人事部もしっかりと発足し(金谷さん、ありがとうございます。)、採用計画もここ3年で2倍以上の人員になる(こういうこと書くと人材系の会社の営業がガンガン入ってくるのですが、テレアポじゃなくて会社の応募フォームから連絡下さると幸いです。)ので、私が経営者として次に目を向けていかなければならない重要な要素の1つに、教育システムを明確に構築する、ということが挙げられる。
 よって、久々のBlog Postでは今私が考える教育とイノベーションの構造について、考えている概念を書き記していこうと思う。

教育と学習の違いとこれまでの教育システム

 「教育」というのは、学校教育、教育制度、教育方針、などの言葉から考えても、自分が他者に対して、または他者が自分に対して、つまり人から人に対して何かを教え、教わるものであり、この教育する側は、意図的、計画的に教わる側に対して働きかけることで、望ましい姿に変化させ能力を伸ばそうとすることを言う。
 一方で「学習」は、経験を通じて知識や環境に適応しゆく上において、自らが自らに対して自らの成長のために行うものである。

 過去から我々の世代を経て今もなお一般的な日本国内での教育システムは、幼少教育から高校生まで、しっかりとした同調圧力が働いている。
①他者と違うことは悪であること
②枠組みが定められた分野で上位ランカーを目指すこと
③ルールを遵守すること
これらを守ることが善とされる教育が今なお続いており、これは歴史の中できちっとした枠組みを作って大量生産の工場で働く人を作るための教育をすればよい、とされる概念が今でも続いている証拠である。
 枠組みがしっかりとされた工場での労働であれば、人々の生産スピードの個体差は少ないほうが良いし、累積勤務時間(=経験値)による生産スピードの向上はできるだけ一定の右肩上がりの傾きに均一化してほしいし、新たな生産方法を考えて試行錯誤して挑戦する人が増えるとそもそも作業が進まない。そのため、余計なことを考えない「教育」が為された人々に、自ら「学習」して成長してもらうのは、勤続時間×生産スピード の2軸の範囲内で、生産性を、予測された範囲内で最大まで上げてもらう、ということが教育と学習に求められてきたことである。
 工場だけでなく、Aという製品を売ってくるように言われた営業職や販売員であっても同じことであるし、古き枠組みの中で行われている経済活動のほぼ全てがこの範囲内である、という解釈も可能である。

仕組み通りに働く人から仕組みを構想する人へ

 2017年から早稲田大学で年に1回学生向けに授業をさせて頂く機会があり、よくこの話をする。私は、世の中はこの5段階に分類されると考えている。

 どのような規模感で考えるかにもよるが、より俯瞰して見れば、私達は「1.仕組みを構想する人」が作ったこの資本主義であり貨幣主義の社会に生まれ、この仕組みの中の経済合理性の最大化のために今経済活動を行い子孫を残すという活動を行っているに違いない。私たちは皆この世界の中では「5.仕組み通りに働く人」に過ぎない。

 しかしながら、ここ数年のパラダイムシフトの1つに「ロボティクス化、オートメーション化、テクノロジー化」が発生し、この「5.仕組み通りに働く人」がどんどん様々な領域の技術革新によって、人間が不要になってきている。工場もロボティクス化によって必要人員はほとんど不要であり、例えばTESLAの工場の動画などをネットで調べて頂ければその自動化の驚異に驚かされるであろう。そこで必要な人員は「4.仕組み通りに(人ではなくロボットを)働かせる人」と「3.言われた通り仕組み(ロボット)を作る人」「2.仕組み(ロボット化)の具体的施策を設計する人」である。明らかに高度化しているのは言うまでもない。
 営業ではマーケティングテクノロジーが進み、属人的なものは全て自動化され、現在では技術革新によって対面での営業からWEB会議システム等によって非対面営業も特に土地の広い海外では一般的になっている(ここは日本の国土の狭さゆえ発展が遅れているのが私の持論である)。物販もEC化され無人レジ、無人店舗化し、昨今の和製Amazon Go「サインポスト」社の株価もうなぎのぼりであるる。あらゆるものから「5.仕組み通りに働く人」の需要が減少しているのは紛れもない事実である。
 一方で、ロボットに代替えするにはまだ技術的に困難な労働力を最低賃金で使おうとする需要はまだ下支えしているのも実情であろう。よって、雇用の需給バランスは、下図のような労働人口×賃金のグラフになっており(青と赤の交わる点がいくらくらいの賃金であるかは読者の皆様の想像にお任せしよう)、日本国内においては中間層が仕事が無く、賃金を下げれば仕事があって、でも中間層は「学習」の総量が不足しており「1.仕組みを構想する人」「2.仕組みの具体的施策を設計する人」としての人材としては能力不足であり、結果として右側の高所得を払える人材が不足している、というのが私の考える市場の現状である。

Twitterで類似したグラフを見かけたのですが出典わからず、ぽいものを作ってみた。

仕組みを構想するクリエイターが必要な時代に

 上記のように、日本だけでなく世界中で、昔から仕組みを構想するようなクリエイティブな人を量産する必要は全く無かった。ごく一部、ほんの一握りが特殊な教育と特殊な学習プロセスを経て、育っていけばよかった。それが教育システムの中に無かろうとも、自然発生的に知的に強いリーダーが出てくればそれでよかったのだ。
 しかしながら、今の社会は前述の通り工場の中にそもそも人間は不要である。つまり、1人でも多くの人が、「1.仕組みを構想する人」になり、産業にイノベーションを起こしてゆく必要がある時代が今である。そのイノベーションの中心には努力の集積の総量(≒学習)の上に成り立つクリエイティブが必要なのである。
 クリエイティビティ無くしてUberやAirBnB、Teslaは生まれただろうか?

クリエイターが人々を熱狂させられたら、もう最強

 クリエイティビティ無くしてUberやAirBnBは生まれていないだろうが、UberやAirBnB、Teslaはクリエイティビティだけでは今の成功は無いと思う。言われたことを言われたとおりしかやらないメンバーしかいない駆け出しのUberやAirBnB、Teslaであったら、今の各社になっていただろうか。
 クリエイティビティに加えて重要な要素は、「人々を熱狂させること」である。自社で働きたいと思わせる人を熱狂させ、自社で働く仲間を熱狂させ、そして自社のプロダクトを持つ人を熱狂させること。これを世の中では「リーダーシップ」という言葉にまとめられがちであるが、リーダーシップという言葉の枠組みを超えた領域にそれはあると思う。
 昔芸能人のGacktさんがテレビか何かで言っていたセリフを思い出した。「飲み会で隣に座っている女の子を落とすのは簡単ですよ。そうではなくて、1番遠くに座っている子を落とす。それができれば、今度は会ったこともない子を落とすまでいけます。」
 経営者が、ビジネスを通じて、ビジョンやミッションを通じて、そして製品を通じてこれらを体現できることが、他人を熱狂させるほどの強いパッションとなるだろう。

 また、パッションがある人は、他人を熱狂させるだけではなく、自分自身を熱狂させることが上手である。自分自身を熱狂させることが上手な人は、当然他者を巻き込むのが上手である。この関係がわかりやすい動画をシェアしよう。

 冒頭に記載した通り、「学習」は経験を通じて知識や環境に適応しゆく上において、自分自身の成長のために行うものであるがゆえ、自分自身を熱狂させることが上手な人は、この学習スピードが圧倒的に高い。自分のやりたいことに対して集中して、自分が学びたいものをどんどん吸収することができる。子供がエンドレスでゲームをやり続けられるのと同じように、エンドレスで学習を続けたとしても何ら苦しみはないだろう。なぜならば、それが本当に大好きなことだからである。
ここで当時スーパー高校生だった10年ほど前のTehuさんの言葉(時間の無い方はyoutube16:05あたりから再生がおすすめ)をお借りする。

『好きなことに対して、「盲信して猛進」しよう。
そしてそのまま突き進んでいれば、自分自身が失敗することなど無いと思っている。なぜなら、失敗を失敗だとは思わないからである。失敗してもそれは僕の本当に好きなことであるから、それは失敗ではありません。失敗も楽しいはずです。それを失敗だとは感じません。』

時代はそういう人が学習を続けられる仕組みになっている。走りながら学ぼう

 学習だ、努力の集積の総量だ、と言いながらも、現実問題自分が全てのことができるわけではないというのも事実である。プログラミングの概念はわかっていても、実際コードは書けないリーダーは沢山いる。これらができなくても、できる人を見つけることができる時代が、今我々が立っているインターネットの時代である。
 ここ10年間で人々が夢を叶えたり成功したりする方法が一気に変化した。音楽家を目指す人が自分がたった一人で家で録音した動画をYoutubeにあげたことで、有名なプロデューサーの目に止まってデビューに至った、なんてことはもはや一般的である。スタートアップの経営者がビジョンだけを語ってCTOを見つけた話も一般的だし、夢の企画書を書いただけでクラウドファンディングで驚くような金額が集まる時代である。わざわざ発表会やオーディションの開催を待つ必要もない。長ったらしい面接プロセスを経る必要もない。僕らは本気で走りながら、仲間を、叡智を、お金をも集めることができる。
 そういう人間が、今の時代に求められる人材なのだ。

世の中に求められる組織

 昨今、学校教育は性に合わない!といって飛び出してくる人の受け皿となる学校や団体がどんどん作られるようになってきた。ここで勘違いしてはいけないのは、「既存の教育には従えない」と「何もしたくない」イコールで結んでしまうことである。それが当然だと言う大人たちがイノベーションの芽を摘んでしまうのである。「既存の教育には従えない」人たちに「学習する喜びと機会」を与えるのが、我々の使命ではなかろうか。
 今、世の中に求められるのは、学習したい人間の量産である。そのためには1人でも多くの若者が、学習したいという気持ちになってもらえるような、社会的システムの構築が必要だ。この社会的システムも、トップダウンのマネジメントでなくて、自ら湧き上がるパッションを呼び起こすものであることが必須である。
 そしてこの気持ちを一緒に高めあえるパッションの高い我々大人たちが、まずは世界を変えてゆかなければならない。

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