CEO 2018.02.11

社長Blog Vol.9:NewsPicksで私の記事がバズったけど、本当に私が伝えたかったことはこれだ。

 弊社内は先日の現代ビジネスに掲載されそしてNewsPicksでバズった「リアル店舗の看板「誰が、どれくらい見た?」が分かる驚きの技術」の記事のおかげで、多数のお問い合わせを頂き、弊社製品の「ESASY」を取り扱うリテールアナリティクス部は嬉しい悲鳴で日々社内は盛り上がっております。


 

 NewsPicks上のPick数は、2018/02/09の時点で768Pickとなり、おかげさまを持ちまして製品のほうにも多数のお問い合わせをいただいており、順番にご案内させていただいている状況で御座います。ESASYの具体的な機能や事例へのお問い合わせもいただいており。あのような長文の記事の中からESASYにフォーカスされることは非常にありがたく思っております。
 
 ただ、私があの記事の中でお伝えしたかったことはESASYの製品紹介ではなく今後のリテールにおけるデータ活用のお話であり、NewsPicks中のコメントの9割が製品に対する書き込みでしたので(それはそれで本当に有り難いことですが)、改めて私達クレストとして創出したい市場についてここでお話ができればと思います。(以下、敬体ではなく常体で失礼します。)

企業自らがデータに強い意識を持たなければならない

 現代ビジネスの記事の中では「取得したデータを自ら活用できない企業が多い」という点について指摘をしたことはとても勇気が必要だった。実際NewsPickerの方々のコメント中には、それに対し耳が痛いと言っていただける方もいる一方で、「データ提供側がこのデータを用いてリアル店舗の売上を上げるコンサルティングまでしっかりしないならば、製品を売っている意味がないだろう!」というよう意味合いの辛口のコメントも投稿されていた。確かにご指摘の通りでありその意見にも当然同意する(全てのお客様にはまだまだ対応出来ていないですが、少しずつコンサルティング事業の人材も確保して徹底的にお客様と伴走できるような仕組みも構築が進んでいる。)が、本質的には自ら小売業を営む側がこれらのデータを活用して自ら自らに活かしてゆかなければ、会社にナレッジが貯まること無く、勝利の方程式を導き出すことは出来ない。
 ここで改めて記載するが、ESASYが実現可能にしたものは、これまでは購買客数より上位のファネルのKPIとして既存のトラフィックカウンターで取得していた「入店量」を「店前交通量\視認量\入店量\滞留量」などのデータをリアル店舗で取得できるというものである。釈迦に説法かもしれないが、
リアル店舗の売上
=客単価 × 購買客数
=平均商品単価 × 購買点数 × 購買率 × 入店数 
であり、この入店数の部分のコントロールするのが、店舗のファサードやショーウインドウ、VMD等の力であった。そして入店数が日々トラフィックカウンターで計測されてきた。ESASYによってもたらしたものは、この入店数がを因数分解可能にしたということだ。簡単に行ってしまえば
入店数/店前交通量 
入店数/(ファサードやディスプレイの)視認量
が初歩的な因数分解の結果であり、これによってファサードやディスプレイがもたらす価値を計測することが可能となる。このデータをPOSと紐付ければ、見えてくるものが圧倒的に違う。CRMやID POSが企業にもたらしたイノベーションのように突如としてこれまで見えなかった世界が見えてくるのだ。繰り返しになるが、このナレッジは企業の財産であり「取得したデータを自ら活用できない企業が多い」という現状から早く脱しなければならない。

日本はデータ経営後進国


 昨今中国のデジタル化のスピードの速さに驚かされるようなニュース記事を頻度高くみかける。また例えば、私のiPhoneに入っているビジネス系アプリのうち名刺管理のSansanとLINE以外は全てアメリカ産のものだ。当然弊社クレストの社内で使っているアプリケーションも、名刺管理システムと会計ソフト、インナチュラル事業で使っているMAツールのSHANONと、POSレジ以外に日本製は1つも無い。経営基盤のDMP・BIダッシュボードにいたるまで外資系のアプリケーションで埋め尽くされている。一方で弊社は特にデータ化が優れているが、日本企業はそもそもデータを用いて経営をすることの重要性が理解できていない経営者が多いようだ。
 余談ではあるが私はかねてから日本の電子カルテの普及率の低さにはいつも疑問を抱いている。例えばスウェーデン、デンマーク、イギリス、オランダでは、すべての開業医が電子カルテを使用している。フランス、アメリカでの導入率はすでに約70%に達しているなど、欧州や英語圏では幅広く利用されている。カナダでは政府主導で電子カルテの普及事業が進められていたり、アメリカでは分野ごとの診療情報共有を民間のデータセンターで行なっているなど、国ごとによってプロセスの違いはあるが、医療ICT化の充実を目指している。これが世界では当たり前のことだ。
一方で日本はどうだろう。このデータを見れば一目瞭然だ。
成長はしてきているものの、世界との差が圧倒的であるのは言うまでもない。電子カルテであれば救えた命が1つでもあったと思うと残念でならない。S(Serious)とC(Casual)の世界(『AI経営で会社は甦る – 冨山和彦』参照)のCの世界が率先してスタートを切らなければ日本は遅れる一方である。

リテールアナリティクス市場も誰もが通ってきた道の途中にいる

 ITバブル真っ盛りの20年ほど前(私はまだ10歳なので人から聞いたり本を読んだ話ですが)各社がこぞって自社ドメインを取得し、とにかくホームページを作っていた。当時WEB制作会社に務めていた方々は「ホームページ作れば売上あがると思ったのに!」とクライアントに怒られてしまっている光景を体感したことがあるかもしれない。

 iPhoneが初めてリリースされた時、はやりに乗って変えたけれども使い物にならないと感じてすぐにガラケーに戻した方が私の周りには多かったと記憶している。
 Google アナリティクス等のアクセス解析ツールが出てきたときも、「アクセス解析をしたところで売上は上がらないだろう」と言っていた方々も多かったであろう。
 また私の著書「マーケティングオートメーション」を読んで頂いた方々からも「MAを導入しただけで売上が上がるのか?」という質問をされることが未だにある。
リテールアナリティクス業界もまだまだこの道の途中だ。データを収集するだけでは売上は上がらない。データを集め、どういう切り口で分析すべきか考え、その結果と既存のデータの何を結びつければ相関が見つかるのかを考え、そしてどういうフィードバックや施策を実行するか、そしてその施策から集まったデータをまたどう検証するか。このPDCAサイクルを様々な切り口から切りまくっていくことが、小売業の「デジタルトランスフォーメーション」である。

リテールアナリティクスをオープンイノベーションの力で定義したい

 今日、小売業経営を行う上で、「データ」はますますその重要度を高めているという事実はもはや私のこれまでの投稿だけでなく、世の中のニュースを見ているだけ十二分に感じて頂いているだろう。かつての右肩上がりの経済環境の中では有効であった、大規模な広告出稿、大量生産、大量販売という事業展開は限界を迎え、小売業は多様化したマーケティング・チャネル、販売チャネル、流通チャネルに対してより柔軟な対応を強いられ、その一方で競合に対しては明確に差別化された強みを形成する必要に迫られている、という事実は読者の皆様であれば必ず理解できるはずだ。
 またデジタル技術の進展とそれを支援する規制緩和や国策による外的要因の下支えにより、市場はより高度化し、企業間の競争においてはよりスピードが求められ、判断要素はより複雑化し、その結果として戦略の良し悪し、戦略策定能力の優劣によってもたらされる企業のパフォーマンスの格差はかつてないほど大きなものになってきていることは言うまでもない。
 こうした事業環境の流れを背景に、小売業の在りたき姿を模索しつつ、この小売業を解析することを私達クレストが「リテールアナリティクス」という言葉で世の中に定義したい。そのため、弊社ではESASYをはじめとする「リテールアナリティクス」領域に対してデータを供給し解析する部門を「リテールアナリティクス部」として、今後この分野の研究に注力するという意思決定をしている。
 ここ数年、小売業の経営理論の重要性はますます高まってきている。しかし、いざしっかりと「小売業解析理論(リテールアナリティクス理論)」を学ぼうとすると、その理論がどこにも体系化されていない、もしくは形骸化したKPIやP/LとB/Sの範囲内におさまる分析の域、を出ていない理論がほとんどであろう。もしくは一部のマーケティング施策に特化しすぎた要素であるため、現代のリテールアナリティクス全体を統括した「概論」的位置付けの書籍さえが存在しないことが現状である。
 
 これから解明されるべきリテールアナリティクス理論は、私達クレスト1社では到底作り上げることは出来るはずもない。あらゆるステークホルダーの方々のあらゆる知見を集約し、そしてみんなで力を合わせて研究し続けることが必要である。(毎回同じような言葉で私の投稿を締めくくることとなることをお許し頂きたい。)まさにオープンイノベーションを辿らなければならないのだ。
Join or Die.である。



株式会社クレスト
代表取締役社長 永井俊輔

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社長Blog Vol.8:今全てのビジネスマンが思考の軸に置くべき10のキーワード
社長Blog Vol.7:リアル店舗に起こるパラダイムシフト2
社長Blog Vol.6:エクスポネンシャル(指数関数的成長)を遂げよう
社長Blog Vol.5:リアル店舗に起こるパラダイムシフト
社長Blog Vol.4:デジタルトランスフォーメーションを迎える全ての企業へ
社長Blog Vol.3:Googleが教えてくれた、リアル店舗の価値と未来
社長Blog Vol.2:シンギュラリティに対するクレストの答え
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