CEO 2017.10.25

社長Blog Vol.8:今全てのビジネスマンが思考の軸に置くべき10のキーワード

 本日の記事は当初は2017年10月27日(金)に招待者様のみで開催するFashion × Techのイベントの出席メンバーの方々、そして自社内または関連企業のメンバーに伝えるつもりで執筆を開始したものですが、シェアリング(オープンイノベーションの意を内包する)の時代、情報発信は内部にとどめておく必要もないという考えから、このブログに一部改変して公開することと致しました。多くのアイデアが共有されインタラクティブにコミュニケーションをとることが世界の技術や産業の革新に繋がり、より良き世界を作れる可能性が広がることを喜びと感じてくれる人が1人でも増えれば、私にとってこれ以上の幸せはありません。

1.ステークホルダーエクスペリエンス

 3年ほど前から、「顧客体験」や「モノ売りからコト売りへ」またリアル店舗系で言えば「店舗のショールーミング化」などというワードが出てきているが、もはやこれらの単語は優秀な読者であれば既に理解して自らのビジネスに組み込まれ、思考の中心の1つとして脳裏に置かれていることだろう。
 このエクスペリエンスは本当に顧客だけのものなのか、という視点が重要である。私がリアル店舗で何らかの接客を受ける時、これを販売員の方に言われたら信じて買ってしまいそうになる、自分なりの殺し文句ならぬ殺され文句がある。「私も実はこれを使っていて、どういう点がすごく良いのですよ。」という自らの体験談を通じたトークである。この技法は恐らく数十年前から技術として接客マニュアルにも書いて有りそうな話ではあるが、ここで目を向けなければいけないのが、販売員に自社の製品を体験させているという点である。最大の顧客であり最大のインフルエンサーである自社の社員こそ、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)ならぬ従業員体験(エンプロイーエクスペリエンス)をしっかりと体感させるべきである。そしてパートナー企業などの提携先にもこのエクスペリエンスの体感は必須である。本当に良いものやサービスを作り続ける源泉は、顧客を含む全てのステークホルダーエクスペリエンスによって、最高のサイクルを生み出すのである。
 テスラは今回のモデル3の初回生産分の納車はほとんどが従業員に割り当てられているという。外資系企業の多くが社内向けやパートナー企業向け(顧客だけではないという点を強調したい)のイベントやお祭りごとに大規模な投資を行っているケースもよく目にするだろう。もはや顧客体験という言葉を超えて、全てのステークホルダーに対して自社が提供できる最大の経験を提供しよう。それが結果として顧客体験の最大化に繋がるのは言うまでもない。

2.シェアリング

 あえてエコノミーを外しているのは、もはやエコノミーの枠にとらわれることの無いシェアリングの実現が大切であるという考えを持っているからである。私が昨今強く頼っているのが、知識と経験のシェアリングである。有名なスティーブ・ジョブズの「点と点を結ぶ|Connecting the Dots」の話は、ジョブス個人の人生の中に点在している経験という点をつなげた、という考えであるが、もはやシェアリングの時代にこれは個人の中の点と点である必要は無い。これを孫泰蔵氏は自身のFacebook投稿の中で「異なる点と点を結ぶ|Connecting different Dots」と表現していたことに強い共感を得たことは言うまでもない。
 知識と経験に限らず、ヒト・モノ・カネの全てが所有から共有に動く時代の変化である。例えばサプライチェーン毎にこの「シェアリング」の概念は無いか検討してみることも出来る。ファッションで言えば、戦略企画→商品企画→商品生産→倉庫→物流→販売戦略→購買→マーケティングというバリューチェーンに分割して考えてみるというのは私がオススメする思考プロセスである。実際倉庫や物流を競合企業同士で提携する(例:ストライプインターナショナルとTSIホールディングスの商品の共同配送)という、10年前では想像も付かなかったようなシェアリングが実現しつつある。もはや接客もマーケティング情報も競合企業同士がシェアリングしても良いかもしれない。
 ベンチャー企業などがこのB2Bのシェアリングを活性化させてくれるサービスを開始しているものも幾つか見受けられる。私も個人的には大変苦手分野であった異業種の経営者とコミュニケーションをとることに昨今は積極的である。知人や同僚とは違う人々と交流して新しい価値が生まれる「人的環境」を意図的に自ら作り出すことをここではお勧めする。そうすることによって、これまでの自分の常識とはまったく異なるアイデアや価値観を得られるようになり、人生がまた一歩前に進むだろう。

3.五感という切り口

 インターネットやコンピューター、そしてスマートフォンの台頭によって人間の五感の中で視覚で情報を収集する比率が圧倒的に増加していることは言うまでもない。街の広告だけでなくスマートフォンの中でもより大量の広告を見て、そしてビジネスの大半のコミュニケーションは電話や実際の面談からEmail、Chatツールに変化している。リアル店舗での接客もEC化によって減少し、ましてや接客しない店舗や声をかけないでという買い物袋まで生まれるような時代の変化である。
 視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚のうち、2010年〜現在にかけて一気に視覚によるインプットチャネルでの通信が増加し、他のインプットチャネルの使用量が減少しつつある。とりわけ減少しすぎているのが聴覚部分であろう。よく50歳以降の諸先輩方が「若者はスマホばかり見ていてけしからん」「若者は面と向かって話そうとせずにすぐメッセージで伝達したがる」などと愚痴をこぼしているのを稀に耳にするが、私はこの諸先輩方の意見に賛同しているわけではない。
 特に聴覚チャネルの未活用度合いは深刻さを増している。1990年代と比較すると、バブル期のワンマン経営者に多かった圧倒的に強く人を惹き付けるパワーを持った社長やマネジメント層が少なくなったと感じる。バブルの経験、ミレニアル世代の影響など要素は多数あるのだろうが、マネジメント側も心に突き刺し、度肝を抜くほどのアウトプットが出来ておらず、またインプット側も度肝を抜かれた経験が無いため、聴覚の重要性になかなか気づいていない。
 ついに日本に今月から一気にAmazon Echo、Google Homeが上陸、そしてLine Clovaの販売を開始した。通信料過多になりすぎた視覚チャネルから、聴覚チャネルへの強化が進む。世界各国でWEB会議ツールはより発展し、文字入力は音声認識へと変わる。あらゆる企業がこのチャネルを制覇しようと動き出している。日本においては聴覚チャネル元年とも言えるかもしれない。
 文字情報や図解された情報も品質が非常に高いのだが、インプット側の経験値や総量に依存した理解度になってしまうこともある。視覚インプットと聴覚インプットの大きな差異は「熱量」を込められる点にある。全く同じ文字列のスピーチでも話し方伝え方で大きく変化する。このあたりを組織のマネジメントでより意識しなければならないのは当然であり、前述のステークホルダーエクスペリエンスの手法としても着目しなければならない。
 人間の脳は成長を遂げる。マイクロチップとの最大の違いは鍛えれば鍛えるほど脳には情報は入るし、上限なしでディープラーニングするものだと信じている。1990年代と比較しても、私達の周りはより多くの質の高い情報にあふれており、明らかに人間の人生の総量は高くなっている。我々は更にこの個としての総量を高めるために、情報のインプットポートが5つもあるとすれば、もっとバランス良くこのポートを使うべきではないだろうか。
 そして次は触覚・味覚・嗅覚の領域へのチャネルの制覇と技術開発が成されてゆくこともまた楽しき未来が待っていそうである。

4.組織・個を超えた集い

 (この分野においてはまだ私も研究段階なのであるが、ここにテーマとしてあえて記したい。)SNSの時代、力は個に集約され、「組織から個へ」という言葉はもはや私達の中では常識となっているだろう。フリーエージェントという言葉も5年ほど前に瞬間的に流行り、今でも個人事業主としての申告数は過去最多となっているようだ。
 この個は本当に最後まで個として動くのか、最近の私のテーマはここにある。組織でもなく個でもない、群れの時代になっているのだと感じることが多い。組織と群れの1番の差は、契約によって成り立つ集合か、信頼によって成り立つ集合か、という差異である。当然組織の契約関係による個の集合体の中に、強きリーダーシップによって確立された信頼関係は存在する。一方で契約関係があるため、信頼の根幹には「労使の関係」がある。
よく個人事業主の方が仲間内で仕事を回し合ったりしているだろう。組織的にはホロクラシーとほぼ同じような形である。利害関係があり互いのメリットがあるから所属しているいつもの仲間、という感じであろう。この群れはどうだろうか。世界を変える群れになりうるのであろうか。
 個人的な思考の話ではあるが、最近私は利害関係者の無い「同志」の集いというものの本質を考えることが多い。恐らく多くの人々が心の何処かで、どんなにビジョナリーな企業であっても、どんなに世界を変えようと願っていても、働くこと=報酬を得ること=生活基盤というところから逃れることは出来ない。働くことを100%報酬から切り離すことができ、そしてその先に大きな「志」があり、これが全員同じ方向を向くという集いやチームを作れれば、きっとそれは「組織・個を超えた集い」になりうる原石であると思う。
(研究分野であるため後日追記する。)

5.意味のイノベーション

 昨今この言葉もネットで検索すればそれなりに出てくるようになった。前回のブログにも記載したが、例えばロウソクが室内で明かりを灯すツールとして台頭していた時代、ロウソクの意味は「明かりを灯すもの」であった。ところが後に電球というものが開発され、ロウソクの「明かりを灯すもの」としての価値は突如として無くなるであろう。だがロウソクは「明かりを灯すもの」という意味から「宗教的なもの」「雰囲気を出すもの」「香りを出すもの」などという新たな意味が込められて現在でも市場に投入され続けている。製品に変化は無くとも、その存在意義、使用用途を変えていくこと、これが意味のイノベーションである。
 意味のイノベーションを遂げた代表的アイデアとして即興で思いつくものを五月雨式に列挙してみる。1980年代後半から始まった日本における水のペットボトル販売は大きな意味のイノベーションであったと思われる。世界でも日本の水道水は純度が高く世界でも稀な「飲める水道水」であった。当然、当時水は水道の蛇口を捻れば、ほとんどタダで出るものであった。ところが、1980年代後半から水は意味のイノベーションを経て、180mlで100円ほどで売買されるようになった。この意味のイノベーションによる企業の収益率の高さは言うまでもない。
 洋服は寒さや紫外線から体を守るものという位置付けから、個人のアイデンティティーの象徴へと変貌を遂げた。食べ物は栄養を体に供給して生命を維持するものから味を楽しむ娯楽に変貌した。音楽は宗教的なものからエンターテイメントに変わった。最近ではまたインスタントカメラやチェキが意味のイノベーションを経て流行り始めているようだ。そしてこのシェアリングの時代、何かを「所有する」ということそのものの価値が再度変貌を遂げて「共有する」というイノベーションを迎えている。
 既に世の中にはモノが溢れている。こんな商品を開発しよう、こんなものがあったら便利ではないか、という商品開発に頭をつかうよりも、すでにある既存製品の「意味のイノベーション」を考えたほうが近道である可能性も高い。

6.エクスポネンシャル(指数関数的成長)

 「最も速く荷物を運べる手段が馬車であった時代に、投資家が馬車1,000台を購入する資金を用意して、物流の効率化を図った。また数年後に更なる投資家が10,000台に投資し、より物流の効率は上がった。」この成長は線形の成長であることは言うまでもない。コールセンターの人数を増やしたら対応できる顧客が増えた、店舗を増やしたら売上が上がった。全て線形の成長である。また「満員電車を回避するためにJRやメトロが2階建てになって収容人数を2倍にした。」というのもまたちょっとひねりを効かせてはいるが線形の成長であろう。「最も速く荷物を運べる手段が馬車であった時代に、投資家が機関車という技術に着目し、資金を集めて開発に費用を投じ、線路を敷き、輸送を効率化させた。」「ローソクの時代、明かりを灯すものとして電球を開発した」という技術やアイデアの変化によってもたらされる何倍、ではなくべき乗の成長がエクスポネンシャル(指数関数)的成長である。というものの、線形の成長が悪いわけではなく、必要なときは店舗を増やすべきであるし、営業も増員すべきである。大切なことは、「今打つ次の一手はエクスポネンシャル(指数関数)的一手か、線形の一手か」という自分の一手への解釈がとても重要だ。
 このエクスポネンシャルは言い換えると「論理的思考には限界がある」という意見と近いかもしれない。優秀な人ほどそうではない、と言いそうだが、エクスポネンシャルが実現できるイノベーティブなアイデアは必ずしも論理的思考からは生まれるわけではない。
エクスポネンシャルを生み出すに避けて通れないこと、それは、自分の過去の経験、成功体験、自分なりのやり方を一度完全に捨て去って目線を変えること。捨てると書くと極端だと言われそうだが、過去の栄光に縋り付かずに、という意味である。

7.20世紀型か21世紀型か

 前述のエクスポネンシャルと考えは近いかと思うが、あらゆる物事の思考や発案のベースに「それって20世紀型?21世紀型?」と問うことを念頭に置くことを心がけている。例えば小売業経営中にP/Lに対する問題があり、売上をいつまでにX%UP上げるには?という定番の問いがあったとしよう。当然単価を上げます、客数増やします、それぞれブレークダウンさせて考えます。マーケティングに投資をして集客を増やし、その投じたコスト分店舗人件費と製造原価を下げられるようにこういう取り組みをして、、、、という議論が必ず出る。(私が社長の弊社でさえこういう議論でもちきりだ!)言うまでもなく20世紀型であろう。当然20世紀があるから21世紀になれたわけで、20世紀型の思考無くして21世紀型の思考は出るはずがない。当然基礎を完全に理解したうえでの話ではあるが、21世紀型のアイデアというものを出さなければ意味がない。
 それはエクスポネンシャル的アイデアでも良いし、意味のイノベーションでも良い。シェアリングエコノミーを活用した商品のレンタルサービスを開始してもよいし、接客ゼロ、人件費ゼロの店舗を作っても良い。接客を全てChatにして退店後も接客を続けてもよいし、VRとARで顧客体験を変化させてもよい。当然リアル店舗ビジネスから早急に撤退してEC専業に特化すると意思決定した企業も大量にある。
 何が正解なのかは誰にもわからない。ただ、20世紀型の思考のままビジネスを続けていては、生き残れる可能性はほぼゼロに等しい。参考までに20世紀型の思考のまま続けた企業の「墓場」をここに転載しておこう。

BUSINESS INSIDER JAPAN:「アメリカにあふれる「墓場」のようなショッピングモール」

8.経験と類推

 既出の通り、Jobsは一見関連のない複数の人生経験が必ずドットで結ばれる日が来ると言っていた。恐らくJobsは、一見関連のない複数の経験が後の彼の人生を、そして世界を変える事になるとは微塵も思っていなかったであろう。しかしながら彼は人生を懸けて複数の経験を結びつける価値を私達に教えてくれた。であれば、彼が残してくれた(個人的にはiPhoneよりもすごい発明)Connecting the Dotsという遺産を活用しない手はない。無関係な経験が偶然に交わるから、風まかせでいいわけではない。そうなってくると、あらゆる未来の可能性にある経験を結びつけることが、自分の人生をそして世界を変える可能性に繋がるのは言うまでもない。
 まずは大量の経験を積むこと。しかもここを戦略的に積むことをお勧めする。といっても、では将棋を必ずやったほうがいいだとか、登山はやったほうがいいだとか、そういった指南をここでするつもりはなく、ポイントは、
①できるだけ多くの種類の経験を
②できるだけ体系的に理解し、
③他人に説明できるほど腹に落とす。
というレベルまでいけると良いと思っている。レストランであれば1件でも多く行ったほうが良いし、趣味であれば多ければ多い方がいい。趣味がコロコロ変わっても良いと思う。一方でテーマを決めて1つを徹底的に突き詰めるという奥深さの経験値も重要だ。

 私は2015年にマーケティングオートメーションのソフトウエアを「何となく」購入し、そこからのめり込んで気づいたら2年後にはマーケティングオートメーションという書籍を書くことになっていた。また最近ではAIがどうやって作られているのか興味を持って、Pythonというプログラムをいじり始めたところ、AIが「知能ではなく単なるプログラムだ」ということにも完全に気づき、感情を持つ部分がViv機能であることも学んだ。この流れで世界でもかなり早い段階で自社でAIを経営と製品に活用しはじめている。また仮想通貨の仕組みにも個人的に興味を持ち始め、仮想通貨への理解も進める中で、これからの小売業のスマートコントラクトの活用や店舗を分散型物流センターとして認識した場合のブロックチェーン技術の活用等にもビジネス目線とユーザー目線の両方から強く興味を持っている。

 とにかく右へ左へ、時に浅く時に深く、あらゆる経験を積むことが重要である。そして経験を大量に積んだ次のステップは、「類推」である。前述の「2.シェアリング」で記載したあらゆるシェアリングビジネスは、UBERとAirBnBがこのマーケットを作ったと確信している。今やファッションのシェアリング、個人カーシェア、情報のシェアリング等、ほとんどのシェアリングがこのマーケットメイカーのビジネスモデルから「類推」されたものだ。「所有しないで共有すればいいよね」っていう言葉にしたら本当に簡単なことだが、ここから類推して、それを信じて世界を変えるビジネスを生み出す力には本当に脱帽である。
 クレストの自社製品のEsasy(エサシー)と後日リリース予定のWada(ワーダー)でさえ、WEB上のAnalytics系ソフトウエアやPPC広告のビジネスモデルから類推し、かつリアル店舗ビジネスにおいてこの概念を当てはめたものに過ぎないと経営者である私自ら言い切れる。前述の私のマーケティングオートメーションも、AIもブロックチェーンも、単なる興味が昂じて学習をしはじめ、そして学びながらそれらをどの産業にあてはめたらどんなことができるのか、という類推を日々始めている。
 よく考えてみれば、アイザック・ニュートンも、りんご(Apple)の落下から万有引力を類推したのだ。音楽のダウンロードのスタンダードだって、Appleはどこかから類推したに違いない。もしかしたらそのAppleが出したiPhoneだって、昔シャープが作ったザウルスから類推されたものかもしれない。

9.民意に問う

 ZOZOが送料の意思決定を顧客(ユーザー)側に委ねたということはニュースとして非常に新鮮であろう。また少し前から、米国の美術館を中心に「Pay what you want(あなたが払いたいだけ払って)」という入場料の決めかたが始まっている。ZOZOの例で言えば結果払われた送料は、 WWD JAPAN:「ゾゾタウン」“送料自由”の平均は96円、都道府県別では近畿2府3県がワーストにの記載の通り、平均送料は96円(税込)で、送料0円を選択した注文は全体の43%だったそうだ。言うまでもなく赤字であろう。ではここで大切なことは何か。彼らZOZOや美術館が大きな赤字リスクを背負っても成し遂げたい大義は何か。それは「価値を民意に問う」ことであると私は考えている。中央集権国家のように、ビジネスも中央集権型のモデルが台頭している。企業がイケてる広告を出しているから、人々は中央集権された広告に踊らされて商品を消費し、作られた流行に乗って、中央集権的文化の中で生きている。後にインターネットが台頭してからというものこの中央集権は分散型に徐々になりつつあり、分散したコミュニティが生まれ始めている。通貨の世界においては、中央集権型からインターネットを活用した分散型ネットワーク上にある仮想通貨の台頭が始まっている。この分散型が台頭するという時代変化の中おいて、徐々に顧客は疑問をもちはじめてはいないだろうか。最適な送料はいくらなのか?最適な閲覧料金はいくらなのか?そもそも収入が同じ中で同じ金額を徴収することは本質的に最適か?では反対に累進課税こそが平等なのか?など、様々な議論が湧いてくるだろう。私もこの領域においては本質的に最適化された答えは持っていない。しかしながら、もっとシンプルに、「今一度民意に問うてみる」ことは重要であることは間違いない。私達(読者の皆様も含め)は、時にビジネス側であり、時に顧客側である。私達の意見を本当の意味で取り入れるための、21世紀型のアンケートとはこういうことなのではないだろうか。

10.データの集積無くしてAI化はできない

 読者の皆様の多くが既に膨大なAI関連の書籍の山の中から数冊は読まれたことであろう。まるで口裏を合わせたかのように書いてあるのは「AIはデータを食べて成長する」という表現だ。食べるとはよくも簡単に言ったもので、Pythonなどをいじりはじめて理解をしだすと、食べるの意味が「データを集積し、精緻化して、AIが読みやすい形に整理整頓してAIに渡してあげる」というのが正しい表現であることが明確にわかる。AIの時代が必ずやってくるのは周知の事実であって、私達が考えなければならない課題は誰がこのAIをどう活用してどのように世界を変えるのか、ということである。AIは必ず来て、我々のこれまでの常識を全て変えてゆく。
 未来を恐れず、この変化を受け入れなければならない。一瞬にして淘汰されてしまう。ではここで、「何もしない=受け入れる」ことが出来るのは、顧客(ユーザー)のポジションからだけであって、当然我々ビジネス側は「何もしない=淘汰される」の一択である。では企業側としてAI化を受け入れるとはどういうことであろうか。それはAIに「食べて」もらうデータを「集積し、精緻化して、AIが読みやすい形に整理整頓してAIに渡してあげる」つまり、AIにとって美味しいデータであるように調理してあげなければならないのだ。
 小売で言えば、POSデータは当然消費者1人ずつに紐づく購買データが集まっている(精緻化されたID-POS)必要があるし、商品の仕入れデータは所在状況から経由地までのデータを持っている必要がある。営業は電話1本の活動履歴から商談内容までAIの自然言語処理に頼らずして把握できるデータの形を整備しておかなければならない。AIにとって「美味しいデータ」を食べさせてあげることが、結果としてあなたのビジネスを最も早くAI化につなげ、あなたのビジネスに対して圧倒的な競争優位性を持たせてくれることでしょう。

松本 徹三 (著):AIが神になる日――シンギュラリティーが人類を救う
この本のタイトルではないが、AIという神に喜んでもらえるお供え物が必要ということですね(笑)。さあ、AIを受け入れる準備を進めてまいりましょう。

最後に

 私達は今、とんでもない時代に生きています。これまで何十年何百年かけてゆっくりと発生してきた産業の変化が、たった1日で起きてしまう時代です。そんな超高速な世界で快適に最適に生きるためには、上記10の思考のツールを頭の片隅ではなく思考の中心に持っておくことがまずは重要です。
それによって、読者の皆様がたった1日のアイデアで世界を変えることができる日が来れば、それこそこのブログによるオープンイノベーションの成功であることは言うまでもありません。

株式会社クレスト
代表取締役社長 永井俊輔

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※社長Blogの全記事一覧です。以下のリンクからご覧ください。

社長Blog Vol.7:リアル店舗に起こるパラダイムシフト2
社長Blog Vol.6:エクスポネンシャル(指数関数的成長)を遂げよう
社長Blog Vol.5:リアル店舗に起こるパラダイムシフト
社長Blog Vol.4:デジタルトランスフォーメーションを迎える全ての企業へ
社長Blog Vol.3:Googleが教えてくれた、リアル店舗の価値と未来
社長Blog Vol.2:シンギュラリティに対するクレストの答え
社長Blog Vol.1:Legacy Market Innovation

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